


日本疲労学会が推奨する疲労回復効果の判定項目
国が進める健康づくりや学会の考え方をもとに、「疲労」を日々の健康状態を知るための重要な手がかりとして紹介します。主観に頼りがちな疲労評価を、より客観的かつ再現性の高い方法で評価するために、日本疲労学会が推奨する自律神経機能、酸化ストレス、睡眠・覚醒リズムなどの評価項目とは何か。それらの指標が、どのように疲労や回復状態の把握に役立つのかをわかりやすく解説します。学会ガイドラインに基づき、FMCCが取り組む科学的な健康・疲労評価の考え方をご覧ください。
出典:社団法人日本疲労学会、抗疲労臨床評価ガイドライン
https://j-fatigue.jp/wp-content/uploads/2024/02/guideline.pdf


自律神経機能評価を用いた疲労の客観的評価
■なぜ「自律神経機能解析」が健康のものさしとして有用なのか
日本疲労学会のガイドラインでは、疲労や回復状態を評価するために多様な客観的指標が推奨されていますが、これらの多くは採血や専門設備を必要とし、日常的・継続的に測定することは容易ではありません。
その中で、自律神経機能解析は非侵襲で、短時間、かつ繰り返し測定が可能という特徴を持ち、日常生活の中で健康状態や疲労・ストレスの変化を把握するための「健康のものさし」として、極めて実用性の高い方法といえます。
日本疲労学会のガイドラインでは、疲労や回復状態を評価するために多様な客観的指標が推奨されていますが、これらの多くは採血や専門設備を必要とし、日常的・継続的に測定することは容易ではありません。
その中で、自律神経機能解析は非侵襲で、短時間、かつ繰り返し測定が可能という特徴を持ち、日常生活の中で健康状態や疲労・ストレスの変化を把握するための「健康のものさし」として、極めて実用性の高い方法といえます。
自律神経は、心拍、血圧、睡眠、体温調節、免疫機能など、生命維持と健康に直結する多くの機能を統合的に制御しており、身体的・精神的ストレスや疲労の影響を敏感に反映します。そのため、心拍間隔などから自律神経の状態を解析することで、自覚症状に頼らず、疲労や回復の度合い、ストレス状態を客観的に評価することが可能となります。
株式会社FMCCでは、こうした自律神経機能解析の特長を活かし、学会ガイドラインの考え方に基づいた、簡便で安価、かつ科学的根拠に基づく健康評価手法を開発・提供してきました。以下では、自律神経機能評価を用いて得られてきた研究データや臨床・社会実装の知見を示しながら、その有用性について具体的に紹介します。
■自律神経機能解析を介した健康評価
ストレスや過労が長く続くと、立ちくらみや動悸、頭痛、睡眠障害、胃腸の不調など、さまざまな身体的・精神的症状が現れることがあります。これらの症状の背景には、心臓や消化管、発汗などを調節する自律神経機能の乱れが深く関与していることが知られています。本コンテンツでは、心拍データを用いた自律神経機能解析を通じて、これまでの基礎・臨床研究により明らかになってきた、自律神経機能評価が客観的な疲労評価法となり得ることを示す成績を紹介します。さらに、疲労やストレス、睡眠、メンタルヘルス状態を科学的に捉える健康評価への応用について解説します。

■年齢を考慮した自律神経機能評価の必要性と新たな指標の開発
自律神経活動の評価には、通常 、心拍の周波数解析から算出されるトータルパワー値(log(LF+HF))や、心電図R–R間隔変動係数(CVRR)などが用いられています。私たちは、健常者2,000名以上のデータを分析した結果、これらの自律神経活動指標は加齢に伴い有意に低下することを明らかにしました。
この結果を踏まえ、小泉らは、検診時に自律神経検査を受けた被験者が自身の結果をより直感的に理解できるようにすることを目的として、健常者群の各年齢における自律神経活動指標の中央値を基準に算出した**「自律神経年齢」**として評価結果を表現する方法を提案し、特許化しています(特許第5455071号)。
図1に、私たちが調査した学校教職員442名の評価結果を示しますが、自律神経活動を表すLog(LF+HF)値は、加齢に伴い有意に低下しており(r=−0.505、p<0.001)、自律神経機能評価においては、被験者の年齢を考慮することが不可欠であることが分かります。

図1.自律神経活動(Log(LF+HF))と年齢との関連
■年齢構成の異なる集団分析を可能にする自律神経活動偏差値(ANA-SS)
このように、自律神経機能評価は個人の疲労状態などを把握する客観的指標として有用である一方、集団分析を行う場合には、比較対象となる集団の年齢構成を一致させる必要がありました。そのため、年齢構成の異なる集団を対象とした解析では、従来の自律神経活動指標をそのまま用いることは困難でした。
そこで私たちは、これまでに収集してきた大規模な健常者データを用い、年齢1歳ごとの自律神経活動値の分布に基づいて、各年齢における自律神経活動の偏差値を算出する手法を開発しました。この指標を**自律神経活動偏差値(ANA-SS:standard scores for autonomic nervous activity)**と名付け、年齢構成の異なる集団においても疲労やストレスの評価に使用可能な指標として特許化しています(特許第6550440号)。
■ストレスチェックへの応用と客観的健康度指標としての有用性
職場のメンタルヘルス対策として義務化されたストレスチェックにおいて、自律神経機能解析をどのように活用できるのかを紹介します。
主観的な問診結果と、年齢補正を行った自律神経指標(ANA-SS)を組み合わせることで、集団全体の健康度評価から個人の疲労・ストレス状態の把握まで、客観的な健康度指標としての有用性を示した研究成果を解説します。

■新たな評価技術とFMCCの提供サービス
自律神経機能は些細な刺激によっても変化しやすいため、健康指標として評価する際には、安静閉眼座位で測定された値を用いることが推奨されています。
私たちは、疲労を誘発しない光・音・匂いなどの刺激に伴う自律神経機能の変化と健康度指標との関連について検討し、これらの変化が疲労、睡眠状態、メンタルヘルス状態と関連することを見出しました。この評価手法についても特許化しています(特許第6501941号)。
さらに、働き方改革関連法案の施行に伴い、企業や教育現場では生産性向上とともに、意欲や能力を最大限に発揮できる環境づくりが求められています。私たちは、作業中の自律神経機能を評価することで、集中力、記憶力、作業効率などを予測できることを明らかにし、関連する特許を取得しました(特願2019-117207)。
株式会社FMCCでは、これらの特許技術を活用し、自律神経機能評価を介した疲労の定量化、疲労回復効果の測定、ストレス度やメンタルヘルス状態の客観的・科学的評価を提供しています。自律神経機能評価装置のレンタルや解析サービスにも対応しておりますので、研究・診療・企業での活用について、お気軽にご相談ください。


自律神経機能解析を介した健康評価
■睡眠覚醒リズム評価
日中の活動量や睡眠の状態を、腕時計型の測定器を用いて客観的に評価します。睡眠時間や中途覚醒、居眠り回数などを解析し、生活リズムの乱れを可視化します。慢性的な疲労では、活動量の低下や睡眠の質の変化がみられることが知られています。睡眠と覚醒のリズムから、疲労による生活の質への影響を科学的に理解できます。

■酸化ストレス評価
疲労が続くと、体の中では細胞を傷つける「酸化ストレス」が高まることが知られています。
血液中の酸化ストレスと抗酸化力を測定することで、疲労の状態を客観的に評価します。
急性・亜急性・慢性といった疲労の段階の違いを見分けることが可能です。
「まだ頑張れる状態か」「早めの休養が必要か」 を判断するための指標として活用されます。

■メタボローム解析
体の中で行われているエネルギー代謝の状態を、血液中の代謝物から詳しく調べる方法です。慢性的な疲労では、エネルギーを生み出す仕組みに異常が生じていることが分かってきました。メタボローム解析により、疲労に特有の代謝パターンを客観的に捉えることができます。疲労の背景にある体内変化を理解し、評価や対策につなげるための先進的な解析手法です。


自律神経機能解析を介した健康評価
ヒトが長期にわたってストレス状態に陥った時、自律神経機能に歪がみられます。
そこで心電図や脈波などを用いて心拍の周波数解析を行うことにより、
交感神経や副交感神経の活動や自律神経バランスを客観的に判定することが可能になります。
疲労やストレスの状態を推測することに繋がりますので予病に有効です。(注:文献1、2参照)


日本における疲労の現状
国内で行われた疲労の実態調査をご紹介いたします。

〇一般地域住民を対象とした厚生省研究班調査(1999年)
1999年、厚生省研究班(班長:木谷照夫)が15~65歳の一般地域住民4000名を対象に本格的な疲労に関する疫学調査(有効回答数3015)を実施したところ、約6割の人が日常生活の中で疲労を感じていることが明らかになりました。
(注:文献1参照)

〇一般地域住民を対象とした厚生省研究班再調査(2012年)
当社が参画した疲労の疫学調査において、一般地域住民の4割近く(39.4%)が半年以上続く慢性的な疲労を自覚しており、疲労を自覚している人の13.6%の人は「しばしば日中に休息が必要である」、5.8%の人は「月に数日以上学校や会社を休む」「しばしば休む」「休職、退職」という状況に陥っていました。
(注:文献2参照)


〇備考
当社は21世紀COEプログラム「疲労克服研究教育拠点の形成」(代表研究者:渡辺恭良,平成16-20年)において、疲労病態における分子神経メカニズムの一端を明らかにするとともに、2013年に設立した大阪市立大学健康科学イノベーションセンターではイメージングやバイオマーカーなどの研究を推進してきました。2015年からは文科省・科学技術振興機構「健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス」プログラムとして展開し、疲労の正確な診断・治療法の開発に取り組んでいます。
文献1. 簑輪眞澄、谷畑健生、松本美富士、ほか.地域における疲労の実態とリスクファクター.愛知県豊川保健所管内の2市4町実態調査.厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復に関する研究」平成11年度報告書 p19-44、2000年3月.
文献2. 倉恒弘彦. 慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及 厚生労働科学研究 障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)平成24年度報告書 p1-29, 2013年3月.
〇医療機関を受診している患者を対象とした厚生省研究班調査(2000年)
2000年、前年に一般地域住民の疲労疫学調査を実施した同一地区において、プライマリケアを担っている診療所や市民病院を対象に疲労のアンケート調査(対象:外来受診患者2180名、有効回答数1767名(81.1%))を実施したところ、半年以上続く慢性的な疲労が45%の患者に認められ、その中で労働や作業能力の低下がみられた患者が43%、労働が困難な状態に陥っている患者が10%認められました。


〇疲労に伴う日本社会における経済損失の算出
厚生省研究班が実施した一般地域住民における疲労疫学調査結果(1999年)と通商産業省産業政策局新規産業課で作成された報告書「経済構造改革の効果試算について」(2000年)を用いて感覚投入手法の1つであるSuccessive Proportional Additive Numerationにより年齢階層ごとの情報通信、エネルギー、物流、金融、医療、介護育児、環境などに与える影響を算出したところ、慢性的な疲労に基づく経済損失は7646億円、病的な疲労に伴う経済損失は4081億円であり、日本における慢性疲労全体によって引き起こされる経済損失は医療費を除いて年間約1.2兆円にも及ぶことが判明しました。



日本における疲労の現状

〇生活の質を評価する指標を算出
生活の質の構成要素である日中の活動量や睡眠状態を、覚醒時平均活動量、居眠り回数、 睡眠時間、睡眠時平均活動量、中途覚醒回数、入眠潜時、睡眠効率などの指標により算出することができます。

アクティグラフ(AMI社製)を用いた睡眠覚醒リズム解析
リストバンド型活動量計レンタルや解析サービスはこちら
当社の姉妹会社である㈱疲労科学研究所では研究目的にて行われる疲労の定量化、疲労回復効果の測定、並びにストレス度の計測を客観的/科学的に行い、皆様の研究や診療にご提供させて頂いております。リストバンド型活動量計のレンタルや、解析サービスなどの共同研究の要望にも対応が可能ですので、お気軽にご相談ください。

酸化ストレス評価
〇生活の質を評価する指標を算出
生活の質の構成要素である日中の活動量や睡眠状態を、覚醒時平均活動量、居眠り回数、 睡眠時間、睡眠時平均活動量、中途覚醒回数、入眠潜時、睡眠効率などの指標により算出することができます。


酸化ストレス値/抗酸化力値による種々の疲労状態の鑑別

メタボローム解析
〇エネルギー代謝で疲労病態を判定
ヒトのすべての細胞は,生存し活動するためにはエネルギーが必要です。通常、食事として取り込まれた糖や脂肪は細胞のエネルギー工場にあたるミトコンドリアにおいて一度ATP(アデノシン三リン酸)という形に変換されて蓄えられており、必要に応じてATPよりエネルギーが取り出されることにより細胞が維持されて増殖し働くことができています。エネルギーの産生に関連した種々の代謝異常はさまざまな疾病に結び付くことがわかっています。簡易な検査法として①ピルビン酸/イソクエン酸②オルニチン/シトルリンの2つの代謝物質比を用いることで生活環境ストレスに伴う疲労病態を判定できる可能性が期待されます。



日本疲労学会が推奨する疲労回復効果の判定項目
〇国からも求められる疲労のモノサシ
厚生労働省では21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)を進めており、特に健康を増進して疾病の発病を予防 する「一次予防」に一層の重点を置いた対策を推進しています。この運動を進める上で疲労の評価は重要なキーワードの1つですが、これまで主に用いられてきた主観的な自覚症状による評価では判定が均一ではないことも多く「モノサシ」と呼べるようなバイオマーカーによる評価系が求められてきました。

〇日本疲労学会が抗疲労臨床評価のガイドラインの発表
日本疲労学会では効能あるいは健康強調表示において、抗疲労および疲労回復促進を訴求できる抗疲労製品の開発及び科学的実証評価が望まれていることより、平成 20 年に「病的疲労を伴わない健常者を対象とする肉体疲労に対する特定保健用食品の臨床評価ガイドライン」を発表するとともに平成23年には肉体疲労だけでなく、日々の疲労を評価することこそ重要であるとの立場より、日常生活により問題となる疲労に対する抗疲労臨床評価ガイドラインを発表しています。
〇当社が疲労度、ストレス度を数値化
このガイドラインでは抗疲労製品(食品·機器·空間など含む)の効果判定の医学的な有効性·安全性を検討するため、その臨床試験の標準的実施方法について現時点で妥当と思われる方法とその一般的評価指針をまとめられており自律神経機能、酸化ストレス、睡眠覚醒リズム、メタボローム分析とともに免疫、サイトカイン、作業、負荷によるパフォーマンス、末梢血遺伝子発現、プロテオーム、FF (Fatigue Factor)、FR (Fatigue Recovery Factor)などの評価が推奨されており、㈱FMCCは客観的な疲労バイオマーカーを活用して疲労の定量化、疲労回復効果の測定、並びにストレス度の計測を客観的、かつ科学的に行い、皆様の研究や診療に向けて、ご提供しています。


