株式会社FMCC(Fatigue and Mental Health Check Center)

睡眠覚醒リズム評価

日中の活動量や睡眠状態を、腕時計型の測定器の中に加速度センサーが内蔵された機器(リストバンド型活動量計)を用いて客観的に調べることにより、疲労病態を評価することも可能である。通常、2~3日間測定器を装着し、その後加速度の変化を判定することより、覚醒時平均活動量、居眠り回数、 睡眠時間、睡眠時平均活動量、中途覚醒回数、入眠潜時、睡眠効率などの指標を算出することができる(図1)。

図1.アクティグラフ(AMI社製)を用いた睡眠覚醒リズム解析

 

 このような機器で算出した睡眠評価指標は、睡眠ポリグラフを用いて評価した指標と高い相関が得られており、多くの学術論文として発表されている(文献1)。

 慢性的な疲労病態では、覚醒時平均活動量の低下、居眠り回数の増加、中途覚醒回数の増加などがみられることが確認されており(文献2,文献3)、このような機器を用いた客観的な睡眠覚醒リズム評価は疲労に伴う生活の質の低下を評価する有用な指標の1つである。

 図2に、健常人1例と慢性的な疲労がみられる代表的な4例の結果を示している。健常人は、覚醒時平均活動量が200回/分を超え、ほとんど居眠りがなく、夜間の中途覚醒も少ない。また、睡眠時間はほとんどの例で6~8時間であった。

 症例1-1は過眠型の症例で、一度睡眠にはいると10時間以上睡眠が見られている。さらに、日中にも昼寝をしていることが分かる。

 症例1-2は過眠が重症化した例で、一日中横になっている。

  症例2は睡眠相が後退している例である。深夜2時頃に就床し、午前11時頃に起床している。このタイプでは総睡眠時間が長いこともしばしばである。提示している例では中途覚醒も伴っている。

 症例3は、不眠による断続的な睡眠をしている例で、一度寝ても短時間で覚醒し、一日に何度も睡眠をとっている。

図2.健常人と慢性的な疲労がみられる症例の代表的な24時間活動量データ

 東日本大震災被災地域において、2013年に小中学校教員142名を対象に疲労度調査を行ったところ、教員群は身体的疲労度、精神的疲労度がともに高値であり、震災後2年が経過した時点でも自覚的な心身の疲労がみられていた。そこで、客観的な疲労度評価として、自律神経機能評価と睡眠覚醒リズム評価を実施したところ、自律神経系のバランス異常(交感神経系の過緊張)、覚醒時活動量の低下、覚醒時居眠り回数の増加がみとめられ、疲弊した状態で勤務している実態が明らかになった(文献4)。

 なお、病院を受診している患者を含めた評価では疲労状態が強いほど覚醒時活動量が低下していたが、通学が可能な大学生77名の調査では、自覚的な身体疲労度と覚醒時平均活動量には正の相関がみられており、部活などで忙しく活動している学生の方が強い疲労を自覚していた。したがって、疲労を訴える被験者が、まだ忙しく仕事をしながら心身の疲労を自覚しているのか、それとも疲弊して日中の活動量が低下してきているのかを客観的に判断する指標としても活用できる。

 弊社の姉妹会社である㈱疲労科学研究所では,研究目的にて行われる疲労の定量化、疲労回復効果の測定、並びにストレス度の計測を客観的/科学的に行い,皆様の研究や診療にご提供させて頂いております。リストバンド型活動量計のレンタルや、解析サービスなどの共同研究の要望にも対応が可能ですので,遠慮なくご相談ください。

㈱FMCC相談メールアドレス : soudan@fmcc.co.jp

㈱疲労科学研究所ホームページ:http://www.fatigue.co.jp/

 

文献

1.Driller M, McQuillan J, O'Donnell S. Inter-device reliability of an automatic-scoring actigraph for measuring sleep in healthy adults. Sleep Sci. 2016;9(3):198-201.

2.倉恒弘彦, 平成21~23年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野) 自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成 平成21年度-平成23年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)総合研究報告書 2012年

3.田島世貴ほか.アクティグラフ、アクティブトレーサーを用いた方法 日本臨床 2007;65(6):1057-1064 

4.大川尚子ほか,教職員に対する客観的疲労度評価. 日本疲労学会誌 2016;11(2):43-55.

5.社団法人日本疲労学会―抗疲労臨床評価ガイドライン2011―日本疲労学会ホームページ http://www.hirougakkai.com/guideline.pdf

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